7TIMES セブンタイムズ

FEATURE

おかわりしてもらえるクラフトビールを
BATSUJI BREWINGで「造る」
Published : 2021年10月8日
出来上がったビールをチェックするブリュワーの畠山崇裕さん
BATSUJI BREWINGでビールを造るブリュワーの畠山崇裕さん ※撮影の時だけマスクを外しています

「クラフトビール造りで大切にしているのは、『おかわり』をしてもらえるかどうかです」。仙台市中心部初となる醸造所「BATSUJI BREWING(バツジブリューイング)」のブリュワー・畠山崇裕さん(37)の言葉に力が入ります。

東日本大震災を機に警察官から転身してビール職人を意味する「ブリュワー」になった異色の経歴の持ち主。この道10年の経験と知識を総動員して挑んだ「メイド・イン・仙台」のクラフトビールがついに完成しました

10月8日から仙台市青葉区の複合施設「CROSS B PLUS」で提供が始まります。造り手の思いを聞きました。 

2種類のヘイジーIPAとずんだヘイジ―が登場 

BATSUJI BREWINGで提供するビールは 

最初に仕込んだビールは、アルコール度数の低いヘイジ―IPA。次に、アルコール度数を上げたヘイジ―IPA。そして、宮城県産の枝豆をふんだんに使った「ずんだヘイジ―」です。

ヘイジ―IPAは、自分のブリュワー人生の中でも「最高傑作」と言ってもいいくらい、美味しいビールが出来ました。品質の高いホップと酵母を用い、そして何より私が愛情を注いだ成果が表れたと思います(笑)。 

「おいしい、もう1杯!」を造ることがブリュワーの役割 

ビール造りで大切にしていることは 

私が目指すのは、「おかわりできるビール」であることです。自分が造りたいと思ったビールを造っても、お客さまに「おいしい」「また飲みたい」と思ってもらえなければ、それはただの自己満足。

クラフトビールは大手の量産品に比べて単価は高いですが、それでもお金を払って2杯目を飲みたいと思えるものを造ることが目標です。

大きなことをいえば、100人が飲んで100人がおかわりするビールが最終目標。自分本位のビール造りではなく、あくまで客観的に、お客さま視点でのビール造りを心掛けています。

「おいしい、もう1杯!」とおかわりしてくれるビールを造って、次々新鮮なビールを楽しんでもらうことが、我々ブリュワーの役割です。 

タンクの調整をする畠山さん
アメリカ式の味わいとドイツ式製造方法、それぞれ良いところを取り入れながらビールを造っています。

ひたすらに、がむしゃらに ビール造りと向き合って 

ブリュワーとしての歩みは 

東日本大震災が転機になりました。それまでは神奈川県で警察官をしていたのですが、故郷の力になりたいと思いまして。生まれ育った宮城県加美町に2011年に戻り、地元の「やくらいビール」に入ってブリュワー人生をスタートさせました。 

それから8年間はがむしゃらにビール造りに取り組みました。ビールは何百種類も飲みましたね。ビールに対する味覚にもっと磨きをかけたかったので。先輩ブリュワーさんが勧めてくれるものは全部飲みましたし、全世界のクラフトビールを制覇するくらいの気持ちでした。

もちろん、技術の習得を目指して、地産地消の素材にこだわって造るビールが自慢の「ろまんちっく村」(栃木県)に研修にも行きましたし、オリジナルビールのレシピを作るために、化学とか数学も勉強しました。6年かけて積み重ねた経験が自信と手応えとなって、お客さまから「おいしい」と言ってもらえるビールを造れるようになりました。

釜の中を確認する畠山さん
アルコール度数低めのセッションヘイジ―IPAは、グレープフルーツの香りが楽しめ、女性やビールが苦手な人も楽しめます。

それからは、ビール造りと両立しながら、東北はもちろん全国のイベントに出張して、自分の手でお客さまに自慢のビールを届けました。お客さまの声を直に聞き、目標とする「おかわりしたいビール」造りに生かしてきました。 

「仙台でクラフトビールファンをさらに増やす場所を作りたい!」。次のステップとして、「職人」の域を超えてビールを提供する側「ビアパートナー」を目指そうと考え始めていました。

そんな時、岩手県花巻市でブルワリー「Brew Beast(ブリュービースト)」を立ち上げたばかりの方に「設備だけはあるけれど、ノウハウもなくうまくいかない」と相談されて…。それでBrew Beastで1年半、醸造所の基盤づくりや後継者の育成、経営マネジメントを担いました。 

釜を確認する畠山さん
今はひとりですべてを担っているので、大変なこともありますが、「任せられている」という責任感がやりがいにもなっています。

噂のブルワリーに「立候補」 

BATSUJI BREWINGでの挑戦を決めた理由

今の自分があるのは、人とのつながりがあってこそ。やくらいビールに入社するときも、ブリュワーとしてビール造りを始めてからも、そして仙台に来るきっかけをもらったのも、すべて「人の縁」です。

特に、BATSUJI BREWINGの話は、花巻にいる時から業界内では噂になっていました。2021年1月、立ち上げに関わっている方から「噂のブルワリーでビール造りができる人を探している」との情報をもらいました。

花巻も軌道に乗っていたし、仙台のど真ん中でビールが造れて、しかもレストラン併設。お客さんとの距離が近くて、クラフトビールファンも増やすお手伝いができる。「わたしでどうですか」と立候補しました。「とにかくチャレンジしてみたい!」というワクワク感でいっぱいでしたね。 

ビールの出来栄えを確かめる畠山さん
これまでのブリュワー人生で、「畠山が造ったビールを飲みたい」と言ってくれる人たちがたくさんいます。待ち望んでいる人たちの声に応えられるビールができました。

クラフトビール造りの魅力「一生の仕事にしたいくらい」 

BATSUJI BREWINGでの目標は 

BATSUJI BREWINGがクラフトビールに興味を持つきっかけになったり、もっと好きになったりする場所にしたいです。

併設のレストランCROSS B PLUS」と連携して、東北・新潟の魅力をいっぱい詰め込んだビールを届けますから。「もう樽が空になりました」ってレストランから嬉しい悲鳴が上がって、私を困らせるぐらいたくさん飲んでもらいたいですね。

「工場を拡張しないと間に合わない!」と焦ってしまうほど、多くのお客さまが口にしてくれたら、ブリュワー冥利に尽きますね。

ビール造りの面白さは、おいしいビールを造ったその先に、人と人とのつながりができることです。造り手が現場に出て、お客さまの顔を見ながら会話して、交流が深まっていく…。一般的な製造業ではなかなか味わえない喜びに満ちています。

ブリュワーを一生の仕事にしたいと思えるぐらい、クラフトビール造りの魅力に取りつかれた私のビールを飲みに来てください。 

※河北新報オンラインニュースでも「BATSUJI BREWING」の記事と動画を掲載しています。

<BATSUJI BREWING クラフトビール>
10月8日から「CROSS B PLUS」で販売スタート。
〔セッションヘイジ―IPA〕低アルコールで飲みやすく、トロピカル系や柑橘系の香りが特徴。
〔ダブルドライホップヘイジーIPA〕高アルコールで苦みと甘みをしっかりと持たせた味わいが自慢。
〔ずんだヘイジ―IPA東北・新潟食材コラボ第1弾。宮城県産枝豆「湯上り娘」を使った一杯。
問い合わせは022(399)7091。年中無休。
※営業時間は店舗にお問い合わせください。